No:
517
タイトル:
GEAR戦士撫子 新Part512
お名前:
プロフェッサー圧縮
投稿日:
2022/09/21 10:44:59
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命辛々逃げ出して人心地ついたユグノー逹は、この一方的な虐殺劇に深い憎悪を滾らせます。
特に今回の「国王の命」による「先制攻撃」は、彼らの心理に激甚を熾しました。
これまでのユグノーの行動は「佞臣より王をお救いする」で一貫していました。
手段こそ短絡的であったとは言え、其処には確かに王家への忠誠があったのです。
それが最悪の形で裏切られたのですから、彼らの怒りはまさに天を衝く勢いでした。
彼らは王家に完全に失望し、見限りました。
そして。
後の本格的な革命の萌芽が、この時生まれたのです。
◇ ◇ ◇
テオドール・ド・ベーズという神学者がいます。
ブルゴーニュ地方はヴェズレーの知事ピエール・ド・ベーズの息子で、ジャン・カルヴァンの死後はカルヴァン派の首魁となった人物です。
彼はこの惨劇を悲しみ、ある決心を元に書をしたためます。
『臣民に対する為政者の権利について』と題されたそれは、端的に「人民に認められない王は王足りえず、僭王に対抗するのは合法である」と主張するものでした。
後に言うMonarchomaque、暴君放伐論がここに産声を上げのです。
◇ ◇ ◇
この暴君放伐論は要するに悪い奴は王だろうが柱に吊るされるのがお似合いだという大変分かりやすいものでしたので、すぐに広まりました。
まあ軍組織として旗印にするには少々野放図なきらいもありましたので、ゲルマン伝統の等族国家文化等も取り入れつつ整備されていきました。
最終的には「君主の統治権は人民との契約の元に与えられる」とされました。
神→君主と神→人民の間に契約があるとし、君主は神の法を遵守し人民に法を守らせる義務があるとするものです。
つまり君主自身が神の法を守らないなら、人民は神の法を優先して当然で、神に背いた君主はポイして良いということです。
この神の法から神を除いて「人が守るべき法」とすると民主主義の原型の一つになります。
つまるところが。
フランス王家は目先のたんこぶ除去するために、自らの命脈を滅ぼす致死毒を生成してしまったのです。
◇ ◇ ◇
この埋伏の毒は百年の時を経て、まずイングランドで炸裂しました。
後に言う清教徒革命です。
そして更に百年後。
史上最大の流血革命としてフランスに舞い戻ってくるのです─────────