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No:595 タイトル:GEAR戦士撫子 新Part590 お名前:プロフェッサー圧縮 投稿日:2024/03/20 10:51:07 単表示 返信

まあ一応。

ノーフォーク公は事実、北部貴族でも首謀格のウェストモーランド伯等に計画中止要請を送ったりしてました。

しかしどうもエリザベスからはポーズと取られたようで・・・・・・

結局ノーフォーク公は毎度御馴染ロンドン塔に出荷されていったのです。


          ◇          ◇          ◇


そもそもロバートがゲロって計画バレして女王から詰められた後に自領に引きこもったのが悪手でありました。

宮廷無断欠席した挙げ句に病気で入院しますーなどと後から連絡だけ寄越すとか、ナメとんのか思われても致し方無し。

と言いますか。

なんで政治屋って都合が悪くなると『入院』するんですかね?

額面通り受け取るアホウがいるとでも思ってるんでしょうか。

そんなナメた態度だから処刑されるんですわ。


          ◇          ◇          ◇


もっともまだこの段階では処刑されませんでしたが。

一応北部貴族を説得しようとしたことが功を奏したか、ウィリアム・セシルが「反乱を企てた証拠はない」として釈放を諫言したのです。

どうもエリザベス的には「自分より先にメアリーが結婚するのが許せん」感があったようなのですが・・・・・・

流石にまぁた下半身事情で乱を起こす訳にも行かぬと自重したようです。


          ◇          ◇          ◇


そんなこんなで。

「二度とメアリーに近づくな」と異常な程念押しされてロンドン塔から晴れて出所したノーフォーク公でしたが・・・・・・

残念ながら断頭台は、彼を逃そうとはしなかったのです─────────
  • No:596 タイトル:GEAR戦士撫子 新Part591 お名前:プロフェッサー圧縮 投稿日:2024/03/27 08:44:45 単表示 返信

    さて。

    ノーフォーク公の運命を決定づける「リドルフィ事件」の前に。

    イングランドの方向性を決定づける極めて重大な事件が勃発します。

    時のローマ教皇ピウス5世による教皇勅書"Regnans in Excelsis"の発布。

    エリザベス1世のカトリック教会破門がなされたのです。


              ◇          ◇          ◇


    現代において信仰の自由を享受するわたくし達には想像できないほど、この時代シューキョーは世界に重大な影響を与えていました。


    ──と、よく言われますが。


    実のところ、一部の狂信者を除いてマジでタテマエ程度にしか思われてなかったようであります。


              ◇          ◇          ◇


    事実、エリザベス即位前から協調路線を取っていたフェリペ2世なんて「余計なことすんなハゲ」とほぼ直球でクレーム入れてましたし、教皇の地元神聖ローマ帝国ですら皇帝から撤回の要請があったくらいです。

    ついでに教皇勅書自体にもエリザベス憎しのあまりか不備があり、カトリック陣営からすら無効じゃないか言われる始末でした。

    それでもピウス5世は頑なに撤回を拒否。

    この問題は誰も予想できない破門を広げていくことになります。


              ◇          ◇          ◇


    先に述べた通り、破門をネ申がどうたらな視点からガチに捉えているのは少なくとも国家指導者層にはほとんどいませんでした。

    しかし。

    裏を返せばそれ以外、貴族層には少なからずいたと言うことです。

    そしてその温度差が。

    取り返しのつかない惨劇のトリガーを引くことになるのです─────────
  • No:597 タイトル:GEAR戦士撫子 新Part592 お名前:プロフェッサー圧縮 投稿日:2024/04/03 08:40:52 単表示 返信

    当時エリザベス朝はユグノーの最大の支援者でした。

    本音としては「敵の敵は味方」程度でしかなかったようでしたが・・・・・・

    しかし実際、これはエリザベス最大の敵に対して実効がありました。

    イエズス会。

    ピウス5世とスペインとべったり癒着している旧教勢力です。


              ◇          ◇          ◇


    彼らは憚らず言えば狂信者集団でした。

    頭でっかちの神学者と言い換えても良いです。

    彼らは神の愛()とやらが何者をも救うと固く信じていました。

    それを宗教文化侵略として利用したのは腹黒い権力者だったかもしれませんが・・・・・・

    知らなかったで済んだら戦争なんざ起こりゃしないのです。


              ◇          ◇          ◇


    ともあれ。

    エリザベスとその側近たちはイエズス会が教皇とスペインの尖兵であり、宗教侵略の手駒であることを看破していました。

    実のところ破門宣告はピウス5世から遡ること実に7年も前から画策されており、対策を練る時間は十分あったのです。


              ◇          ◇          ◇


    この時期には既にイングランド国教会は制度整備をほぼ終えており、当時から破門の実効果は危ぶまれていました。

    それでも強行したピウス5世はどんだけと言わざるを得ません。

    本当狂信者が権力握るとロクなことがありませんわね。
  • No:598 タイトル:GEAR戦士撫子 新Part593 お名前:プロフェッサー圧縮 投稿日:2024/04/10 08:44:21 単表示 返信

    とまあ。

    言うほど実効力のなかった破門ですが・・・・・・

    タテマエとしてはまぁまぁ有効でした。

    名目上旧狂信者であるメアリーを御輿にするには十分であったと言えます。

    もはや楽隠居の道は絶たれたのです。


              ◇          ◇          ◇


    まあもっとも。

    隠居して余生を過ごす選択肢は端から眼中にないようではありました。

    事あるごとに我こそはイングランド王家正統後継者であるとのたまってましたからね。

    その意味では処刑ルートは避けようがなかったかもしれません。

    少なくともこの期に及んでは。


              ◇          ◇          ◇


    そんなこんなで。

    ストーリーofメアリーは最終章を迎えることになります。

    前座と言うと何ですが・・・・・・

    起承転結の承にあたる事件が幕開けます。

    リドルフィ事件がそれです。


              ◇          ◇          ◇


    リドルフィというのは人名で、フィレンツェの銀行家ロベルト・ディ・リドルフィから取られています。

    メアリーを王位につけてエリザベスを排除しようと企む教皇ピウス5世からの刺客です。

    彼はまず最初にメアリーと接触し、燻っていた玉座への執着に火を付けました。

    そしてメアリーをやる気にさせたリドルフィは、次にイングランド大貴族ノーフォーク公に接触しに行くのです。
  • No:599 タイトル:GEAR戦士撫子 新Part594 お名前:プロフェッサー圧縮 投稿日:2024/04/17 17:41:18 単表示 返信

    ノーフォーク公宅を訪れたリドルフィは、当代当主にメアリーをイングランド女王とする計画に加担するよう迫りました。

    しかし前回で心底懲りたノーフォーク公は、頑として首を縦に振ろうとしませんでした。

    まあ失敗すれば今度こそ振る首が無くなろうというものですから当然といえば当然です。

    もっともそれだけではなかったようですが。


              ◇          ◇          ◇


    ここら辺に関してはかなり諸説あり・・・・・・

    ・破門の影響は最小限とはいえ、それはエリザベス一派の辣腕によるもので今政権が倒れては混乱必至
    ・メアリーは今でも個人的には好意的に見ているが、そもそもイングランド王位につける気はなかった
    ・あわよくばの野心がないとは言わないが、今はその時期ではない

    etcetc

    特に時期に関しては味方ヅラしたノータリン共にひどい目に遭わされたばかりですからね。

    さもありなんですわ。


              ◇          ◇          ◇


    どうやら説得の目がないと悟ったリドルフィは、一見大人しくノーフォーク公宅から引き上げます。


    しかし。


    この後この男は、とんでもないことをやらかすのです──────!


              ◇          ◇          ◇


    リドルフィはミッションであった「ノーフォーク公からローマ教皇及びスペイン王フェリペ2世にメアリーのイングランド王位就任への援助依頼を行う」を、なんと自分で手紙を書いて捏造しやがったのです。

    一応は「ノーフォーク公のサインはない」と言ってはいますが・・・・・・同意は得ている等とほざいてれば誤差ですわ。

    いやもう、どんな神経してたらこんなことできるんですかね?

    心臓どうなってるか解剖してみたいですわ。

    もうとっくに朽ち果ててますけど。
  • No:600 タイトル:GEAR戦士撫子 新Part595 お名前:プロフェッサー圧縮 投稿日:2024/04/24 08:39:58 単表示 返信

    と言いますか。

    実はこの男、直前の北部諸侯の乱の時にも旧教側で活動してまして・・・・・・

    あっさり後の秘密警察長官フランシス・ウォルシンガムにとっ捕まってたりします。

    まあ大した活動もしてなかったのであっさり釈放された訳ですが・・・・・・

    後の動きの不自然さから、この時に『仕込まれていた』との見方もあったりします。


              ◇          ◇          ◇


    と言いますのも。

    北部諸侯の乱以前より、放蕩女王メアリーを野放しにしていては旧教反逆の芽が尽きることはないというのが秘書長官ウィリアム・セシル派の見解であり。

    近い将来何らかの形で排除しなければならないと考えていたからです。

    つまるところがリドルフィはそのための「草」

    旧教派に見せかけた埋伏の毒であった、というものです。


              ◇          ◇          ◇


    彼は銀行家であり、その筋でローマ教皇と近しい位置にいました。

    その伝でスペインとも交渉があり、何某か小細工を弄するのであれば接触を受けやすい立場にあったのです。

    そして事実、彼はローマ教皇から内乱工作の依頼を受けたのです。


              ◇          ◇          ◇


    ついでに言いますと。

    ウィリアムは前々からノーフォーク公と政治的に対立していて、先の乱で仕留めきれなかったことを苦々しく思っていました。

    ノーフォーク公は大貴族であり、本人はやんわり否定していますが旧教派と見られていました。

    つまり。

    この機に乗じて「疑わしきは罰する」仕掛けても何ら不思議はないということなのです。
  • No:601 タイトル:GEAR戦士撫子 新Part596 お名前:プロフェッサー圧縮 投稿日:2024/05/01 08:53:23 単表示 返信

    実際のところ。

    このリドルフィ事件、いくつか非常に不可解な点がありまして・・・・・・

    今なお議論の絶えない出来事であります。

    その論点の一つとして。

    リドルフィ自身の動きがあります。


              ◇          ◇          ◇


    先に述べた通り。

    リドルフィはノーフォーク公と接触して説得を試みたのは事実です。

    これは使用人等の証言があり、確実にあったことと言ってよいでしょう。

    しかし。

    リドルフィは何故かノーフォーク公説得を早々に諦め、あまつさえ偽造まがいのことをやらかしました。

    ローマ教皇直々の極秘ミッションにしてはあまりにお粗末すぎます。


              ◇          ◇          ◇


    その上そのお粗末な報告を聞いてスペイン王フェリペ2世が実際に動き出そうとしていたのも不可解です。

    口八丁でノーフォーク公がサインしていない部分が端折られた可能性はありますが・・・・・・

    或いはノーフォーク公はメアリー≒旧教側との思い込みがあったのか。

    いずれにしても慎重王とまで称されたフェリペ2世にしてはウカツと言わざるを得ません。


              ◇          ◇          ◇


    不自然な点はまだあります。

    ウィリアム・セシル肝いりの秘密警察は、このリドルフィ事件をほぼ初動から掴んでいたと言われています。

    しかし主犯格であるリドルフィが逃亡する段になってその鉄壁の情報網を何故か機能せず、まんまとトンズラを許してしまっています。

    一番肝心な時に役立たずとは一体どういうことでしょうか?

    ちなみに秘密警察首魁フランシス・ウォルシンガムは特に何か責任を取らされた形跡はないようです。

    これがおかしくないと言うには無理があります。

    何らかの思惑が働いたのは間違いないでしょう。
  • No:602 タイトル:GEAR戦士撫子 新Part597 お名前:プロフェッサー圧縮 投稿日:2024/05/08 08:40:37 単表示 返信

    まあもっとも。

    流石にリドルフィがイングランド国内にいる時に表立って動き出すようなバレバレのことは辣腕セシルがするはずもなく。

    また彼も自ら足繁く関係者参りをしていた訳でもありませんでした。

    陰謀発覚は彼がパリにいた時に行われ。

    ロベルト・ディ・リドルフィは余裕綽々に逃げ遂せたのです。


              ◇          ◇          ◇


    なお。

    彼はその後も暫く教皇に仕えていたようですが・・・・・・

    晩年はフィレンツェに戻り、上院議員になって。

    そのままフィレンツェで天寿を全うしました。

    ・・・・・・いやはや、ノーフォーク公他からすればマジふざけんなな生涯でしたわね。


              ◇          ◇          ◇


    まあ、これは彼自身の悪運もあったでしょうが・・・・・・

    某宰相の遠大な計画の一部を担った裏取引の報酬である気がするのは わたくしだけですかね?

    もし個人の才覚だけでここまで大それたことが出来たのなら、すぐ田舎に引っ込んで代議士なんてやろうと思わない気がするのですが。

    この陰謀事件の推移を見てますと、「次はもっと上手くやれる」と思って何ら不思議はないと思います。

    それをしなかったのは・・・・・・

    やはり最初からノーフォーク公(とあわよくばメアリー)をハメる計画だったのでは?

    そしてその青写真を描いたのは敏腕宰相ではないか?

    このように思えてならないのです。


              ◇          ◇          ◇


    ま、陰謀論乙と言われればそれまでですが。

    しかし多々不自然な部分があることも事実。

    それを補強する話が、ノーフォーク公のほぼ魔女裁判です。