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No:525 タイトル:GEAR戦士撫子 新Part520 お名前:プロフェッサー圧縮 投稿日:2022/11/16 09:47:46 単表示 返信

さて。

この無軌道というか無秩序または無法状態を、王母兼時々摂政のカトリーヌが座して見ていたかというと無論そんなことはありません。

事が起こる前から、様々な手を打ってはいました。

もっとも重要な計画は尽く上手く行かなかった訳ですが。

何故上手く行かなかったかと言えば・・・・・・

究極的には運がなかったとなりますでしょうか。


          ◇          ◇          ◇


こう言ってはなんですが、カトリーヌは生まれた時から呪われてるとしか思えない人生でした。

生まれてすぐに両親が死んで親戚の権力者の間をたらいまわし。

勝手にクーデター起こされて修道院に叩き込まれた挙げ句に市中引き回しの刑に処せられ、命からがら逃げ出したと思ったら政略結婚の具。

嫁ぎ先では石女扱いされて死ぬ思いで出産に漕ぎ着けても夫は愛人に夢中。

それでも愛を捧げていたら夫は馬上試合で頓死とマジでロクな事がありませんでした。

よくもまあ、世を儚まなかったものです。

このど根性も合わせて名作劇場主人公感ではありますが。


          ◇          ◇          ◇


閑話休題。

まずカトリーヌは国難を無秩序に拡大させている末息子を呼び付けて叱り付けました。

その説教は6時間にも渡ったと言いますが・・・・・・

正直言ってその後のアンジュー公の行動を見る限り、効いているとは思えませんわね。

シャルル9世の時も説得に難航していたことから見るに、カトリーヌは説得下手かもしれません。

目の上のたんこぶディアーヌを追い出して政権握って十数年、政治的ネームド参謀の名前がさっぱり聞こえてこないところから見ても・・・・・・

そもそも人を味方につけるのが苦手の可能性もあります。


          ◇          ◇          ◇


まあ縁も運の内、実力の内です。

元々人の上に立つ器ではなかった・・・・・・と言ったら厳しすぎでしょうか。

ただまあ。

当人に選択肢などなかったことを考えますと、運命に翻弄された憫れな母であったと思います。
  • No:526 タイトル:GEAR戦士撫子 新Part521 お名前:プロフェッサー圧縮 投稿日:2022/11/23 18:20:05 単表示 返信

    ともあれ。

    カトリーヌは自らが最善と思う手は全て打ってきました。

    しかしこう言ってはなんですが・・・・・・

    後知恵でなく当時の視点から見ても、客観的にベストとは言い難い策ではありました。

    ナバラ王アンリと末娘マルグリットの結婚もその一つです。


              ◇          ◇          ◇


    先に軽く触れましたが、この結婚は誰も幸せにならない結果となりました。

    カトリーヌの目論見としては夫婦生活がどうであろうと婚姻したという事実があればそれで問題ない考えだったんでしょうが・・・・・・

    サン・バルテルミの虐殺から全てが狂いだしました。

    まぁあの虐殺自体がカトリーヌの企みだったのですから、因果応報としか言いようがありませんがね。


              ◇          ◇          ◇


    と言いますか。

    結婚式直後に新郎を幽閉して放置プレイとか何考えてるんでしょうね?

    ただでさえ新婦は最後まで(それこそ結婚式の〆ですら)反抗していたのに、多少なりとも歩み寄る機会を設けなかったことは後にカトリーヌとヴァロワ朝にとって致命傷となります。

    といいますかカトリーヌ、ちょくちょく王母は人の心がわからぬムーブかましてますが・・・・・・

    友人を得る機会が7歳くらいまで過ごしたフィレンチェだけと考えると、やむを得ない境遇であったと言えます。


              ◇          ◇          ◇


    本人が人間を理解しないマシーンであったとしても、側近なりが補佐していれば違った展開もあったでしょう。

    しかし輿入れ後のカトリーヌ、王の寵愛は愛人ディアーヌに独占され、跡継ぎを産む機械としても8年もの間失格の烙印を押されていました。

    これで信頼できる腹心など出来るでしょうか? 否出来る訳がありません。

    つくづくカトリーヌは運に見放された女帝だったのです。
  • No:527 タイトル:GEAR戦士撫子 新Part522 お名前:プロフェッサー圧縮 投稿日:2022/11/30 10:46:55 単表示 返信

    運といえば。

    カトリーヌの子女は揃いも揃って出産運に恵まれませんでした。

    母后からしてえらい時間がかかったので、そういう血筋なのかもしれません。

    まあ子女のほとんどが夭逝しているので生まれる暇がなかったのは事実ですが。

    ただ。

    歴史を俯瞰するとヴァロワ朝絶対滅ぼすマンだかウーマンが暗躍してたのではないかと。

    そんな気にもさせられます。


              ◇          ◇          ◇


    実のところ。

    アンリ3世がさっさと手を出してマルグリットと子を成していれば、この後の3アンリの戦いは起こり得えませんでした。

    ・・・・・・いえ、子が早世するのも珍しくなかったですから・・・・・・起こり得なかったは言い過ぎですか。

    そもそも3アンリの戦いはギーズ一族が増上慢した結果ですから、多少時期が前後したところで起きるのは必然だったのではないでしょうか。


              ◇          ◇          ◇


    まぁとは言っても。

    アンジュー公が頓死してプロテスタント首魁のナバラ王アンリが第一継承者にならなければギーズ一派が暴れる大義名分もなかったので・・・・・・

    戦闘は小競合いに終始して、主な舞台は宮廷暗闘だった可能性もあります。

    まあ史実でも決め手は暗殺と暗殺返しだったので、大筋では変化しなかったかもしれません。

    歴史はまこと複雑怪奇ですわ。


              ◇          ◇          ◇


    それにしても。

    ナバラ王も結局はパリ市民の偏執的な旧教支持に屈して改宗するのですから、最初からやっとけと言いたくなります。

    パリ市民も改宗如きであっさり受け入れるのもなんだかなであります。

    まあここら辺は現代っ子のわたくしには理解できない感覚ですわね。

    昔はもっと宗教依存が激しかったらしいですが・・・・・・

    正直想像の埒外であります。
  • No:528 タイトル:GEAR戦士撫子 新Part523 お名前:プロフェッサー圧縮 投稿日:2022/12/07 09:34:16 単表示 返信

    とまあカトリーヌにとっては割とお先真っ暗な状況でしたが、いよいよ決定的にまずい事態が訪れます。

    末息子アンジュー公フランソワの死です。

    ギーズ一派がのさばって王家への求心力が低下する中、若き後継者筆頭の死は文字通り致命的な打撃を与えたのです。


              ◇          ◇          ◇


    まあアンジュー公もプロテスタント側で戦ったりカトリック同盟に与したりネーデルランドにちょっかい出したりと蝙蝠っぷりを遺憾なく発揮してた訳ですが。

    逆にその腰の軽さというか節操のなさが宗教的偏執を感じさせなかったりしたかもしれません。

    即位すればカトリックになってくれるだろう的な。

    王として都合が良ければそうするだろうのような期待があったとしても、まあおかしくはなかったと思います。

    伝統的狂信者のギーズ一派がどう思うかはさて置いても。


              ◇          ◇          ◇


    しかしそのような危ういバランスと言いますか淡い期待は、アンジュー公が結核で頓死して頓挫しました。

    この死によりアンリ3世の死後フランス王座を継ぐのはプロテスタント首魁ナバラ王アンリとなり、王を頂いてなおプロテスタントを圧しきれないカトリック陣営にとって致命打になる未来が現実味を帯びてきました。

    となれば座して死を待つなど有り得ないのがギーズ家の流儀。

    すぐさま行動に移します。


              ◇          ◇          ◇


    手始めにギーズ公アンリは未だ宮廷を掌握しきれてないアンリ3世に圧力をかけ、ナバラ王アンリの王位継承権を無効にさせました。

    更に時のローマ教皇シクストゥス5世と連動して破門状を出させます。

    当時政教分離何それレベルで密接に関係していたので、この破門攻撃はナバラ王アンリに深刻なダメージを与えました。

    その尾は3アンリの戦いが終わった後々まで引くことになります。
  • No:529 タイトル:GEAR戦士撫子 新Part524 お名前:プロフェッサー圧縮 投稿日:2022/12/14 09:33:07 単表示 返信

    まあ旧教側も言うほど一枚岩ではありませんでした。

    世俗の権力とかどうでもいい敬虔な信徒もそれなりにいて、特にフランスにはそれなりに歴史を持つガリア主義もあります。

    有り体に言って国内事情は四分五裂の惨状で、その上プロテスタントの背後には相変わらずイングランドの影がチラつきます。

    もはや自陣営以外はみんな敵、と言っても過言ではなかったのです。


              ◇          ◇          ◇


    なお我が道行き過ぎるギーズ一派はスペインの援助を取り付け、北フランスの制圧を開始します。

    第8次ユグノー戦争の始まりです。

    何しに北フランスの田舎まで? には諸説ありますが・・・・・・

    後の英西戦争に向けてスペイン無敵艦隊の補給港の確保も目的の一つと言われています。


              ◇          ◇          ◇


    当時の───ある意味では今もですが───の欧州は各国一通り殴りあっていましたが、特にイングランドとスペインは怨敵と言って過言ではない犬猿の仲でした。

    特にプロテスタント大首領エリザベス1世が即位してからは殴りあわない日がないくらい喧嘩外交していましたが・・・・・・

    ある事件によりいよいよ全面戦争に突入します。

    国王暗殺未遂で処刑されたイングランド王位継承者、メアリー・ステュアート。

    かつてカトリーヌの長男フランソワ2世に嫁ぎ、紆余曲折の末イングランドに出戻ってきた未亡人です。


              ◇          ◇          ◇


    元々メアリーはイングランドの政争に敗れてフランスに亡命してきたようなものでした。

    時のフランス国王アンリ2世は仇敵イングランドを屈伏させるチャンスと捕らえ、ことあるごとにメアリーこそ正統イングランド女王であると喧伝し、メアリー本人もノリノリで我こそは正規女王を自称していました。

    まあ無根拠と言う訳でもなく、イングランド国内にも支持派がいたりしましたが・・・・・・

    一度即位したものをひっくり返すのは無論並大抵のことではなかったのです。
  • No:530 タイトル:GEAR戦士撫子 新Part525 お名前:プロフェッサー圧縮 投稿日:2022/12/21 09:58:37 単表示 返信

    と言いますか。

    実のところ、王の血統を残したのはこのメアリーの方で、エリザベスはお見合い話ばかりの耳年増で終わったので王族としての評価はむしろ逆となります。

    後世の後知恵と言われればそれまでですが・・・・・・

    まこと人生、何があるか分かったもんじゃありませんわね。


              ◇          ◇          ◇


    もっともエリザベス自身も別に同性愛者とか男に興味ないとかではなかったようで、実のところ成婚しなかったのは歴史のミステリーの一つです。

    一説によると継母の再婚相手トマス・シーモアとか言うロリコン野郎に狙われたのがトラウマとも言われていますが真相は不明です。

    わたくし的には治世の鉄の女っぷりからしてそんなタマかと思うのですが・・・・・・

    まあ私人と公人は別物ということもある程度理解はありますので、そんな単純な話でもなかったのかもしれません。


              ◇          ◇          ◇


    エリザベス女王も大概めんどくさい御仁でしたが、メアリーも負けず劣らずめんどくさい経歴の持ち主です。

    最初の夫フランソワ2世が頓死してスコットランドに帰国した彼女は取り敢えずスコットランド女王となり、異母兄弟であるマリ伯ジェームズ・スチュワートを政治的右腕に任命しイングランド女王の座を狙い始めます。

    自称自体はフランス王妃時代からやっていたようですが、いよいよ腰を据えてかかるようになったようです。

    その一環も兼ねてメアリーはダーンリー卿ヘンリーとの再婚を推し進めることにしました。


              ◇          ◇          ◇


    ダーンリー卿ヘンリーは母方の従兄弟でイングランド王位継承権としては自分(メアリー)と同格で、基盤固めには申し分ない相手でした。

    となれば政敵エリザベスが黙っているはずがありません。

    即座にヘンリーに「イングランドに戻ってこなければ反逆罪と見なす」と突き付け、実際に彼の母マーガレット・ダグラスをロンドン塔に軟禁しました。

    しかしダーンリー陣営は、その警告をまるっと無視したのです。
  • No:531 タイトル:GEAR戦士撫子 新Part526 お名前:プロフェッサー圧縮 投稿日:2022/12/28 11:06:27 単表示 返信

    まあこのマーガレット・ダグラスは前にも結婚関係でロンドン塔に投獄されてたりしますので、むしろ勝手知ったる何とやらだったかも知れません。

    と言いますか彼女、先女王メアリー1世から次代女王にするつもりと言われていましたので元からエリザベスとの関係は最悪でした。

    あの女狐の嫌がることならもっとやれくらい思っていても不思議はありません。


              ◇          ◇          ◇


    そもそもダーンリー卿ヘンリーとメアリーの結婚を推進していたのはこのマーガレットという話もあります。

    この結婚によりイングランドとスコットランドの王位継承権が一本化され、予々からの懸案であったスコットランド問題に解決の鼻緒が付けられるからです。

    ついでにと言いますか本命の政治権力基盤も磐石になると来ればやらない理由がありません。

    そして敵対するエリザベスからすれば、寝言は寝てから言えの暴挙でもあったのです。


              ◇          ◇          ◇


    しかしこの一連の騒動があった1560年代はフランス側で言えばシャルル9世の御世で、次のユグノー戦争に向けて各方面絶賛暗躍の真っ最中の時期です。

    ただでさえ足元不安定の上一応他国であるスコットランドへの有効な干渉手段はそう多くありませんでした。

    それこそ未だイングランド国内にいたマーガレットを捕まえて幽閉するくらいしかなかったのです。


              ◇          ◇          ◇


    しかし。

    実のところ、エリザベスがメアリー問題解決に乗り出す必要は余りありませんでした。

    何故ならば。

    メアリーが結婚相手に選んだヘンリーは、女癖悪い上に権力に固執するテンプレ悪役貴族だったからです。
  • No:532 タイトル:GEAR戦士撫子 新Part527 お名前:プロフェッサー圧縮 投稿日:2023/01/04 09:31:44 単表示 返信

    ダーンリー卿ヘンリー・スチュワートは第4代レノックス伯マシュー・ステュアートとマーガレット・ダグラスの間に生まれました。

    母マーガレットも結構アレな人でしたが、父マシューも勝手にダンバートン城に攻め入った揚げ句にスコットランドから追放されてたりしたので、ヘンリーがアレなのも血筋と環境の成せる技であったでしょう。

    まあ当人にも直そうという気が皆無のようでしたので自業自得ではあります。


              ◇          ◇          ◇


    ちなみこのダンバートン城・・・起原はなんと5世紀、古代ローマ時代まで遡ります。

    クライド川とリーブン川の合流地点沿いに建つ要衝で、アーサー王伝説にも登場したことがある由緒正しい古城です。

    スコットランド王城となっていたこともあります。

    この時代になると刑務所として使用されていたようですが、立地的に重要拠点であることに変わりはなかったでしょう。

    後にメアリーもこの城を舞台の一つとしてメアリアン内戦が勃発したりするのですが、それはもう少し後の話になります。


              ◇          ◇          ◇


    閑話休題。

    典型的プレイボーイ貴公子であったヘンリーは、その手練手管によってメアリーをメロメロにしました。

    結婚前からロス伯、オールパニ公、しまいにはスコットランド王の称号すら与え、地位も名誉もほしいままにさせたのです。

    端から見たらヒモに貢ぐダメ女以外の何者でもありませんでしたが、当人たちはどこ吹く風。

    まさにこの世の春を謳歌していました。


              ◇          ◇          ◇


    地位・名誉・そして金。

    結婚強行当時のヘンリーは、まさに人生の絶頂期でした。

    ここで満足しておけば、周囲から煙たがられつつも栄光の人生のまま生涯を終えられたかも知れません。

    しかし、強欲というものは際限がないから強欲なのです。

    そして強欲は破滅への一里塚。

    間も無く彼は、それを身をもって思い知ることになります。
  • No:533 タイトル:GEAR戦士撫子 新Part528 お名前:プロフェッサー圧縮 投稿日:2023/01/11 11:37:06 単表示 返信

    最初の兆候が何であったかは、歴史資料からは推測困難です。

    ただ事実として、ヘンリーはスコットランド王の名誉だけでは飽き足らず実権を寄越すよう再三再四に渡って要求していたこと。

    結婚後も浮名を流し続けたこと。

    そして妻メアリーが病に臥せっていた時に1週間以上も狩猟で遊び呆けていたこと。

    それらによってブチ切れたメアリーがスコットランド王を剥脱し、国王夫妻の肖像を描いた銀貨を全て回収したこと。

    最初がどうあれ、もはや関係が修復不能であることは誰の目にも明らかだったのです。


              ◇          ◇          ◇


    さて当の浮気亡者はどうしてたかと言いますと・・・・・・

    ある意味予想通りに逆怨みしていました。

    自分に冷たくなったのはメアリーが不倫してるからだ、等と自らの所業を火星軌道まで放り投げた妄言を垂れ流し、不倫相手(妄想)の抹殺を企むようになります。

    その想像上の不倫相手の名はデイビッド・リッチオ。

    音楽家にしてメアリーの秘書、そしてダーンリー卿ヘンリーの友人でもあった男です。


              ◇          ◇          ◇


    リッチオはピエモンテ州生まれのイタリア人で、カトリック信者でした。

    メアリーはプロテスタント容認派でしたが自身は改宗する気もなかったので、リッチオは接しやすい相手でした。

    更に言えばリッチオは気遣いのできる男で有能とくれば、そりゃあ重用するってもんです。

    誰だってそーします。わたくしだってそーします。


              ◇          ◇          ◇


    なお当時のスコットランドはメアリー帰還のちょっと前からプロテスタントが幅を利かせており、メアリーは他所者扱されていたと伝えられています。

    夫ヘンリーは一応カトリックではありましたが・・・・・・

    側近に取り立てていたマリ伯ジェームズ・ステュアートやウィリアム・メイトランド等有力貴族は大体プロテスタントでしたので、表向き融和政策に賛成していたとしても深い溝があったのです。
  • No:534 タイトル:GEAR戦士撫子 新Part529 お名前:プロフェッサー圧縮 投稿日:2023/01/18 09:45:38 単表示 返信

    ちなみにそのマリ伯はメアリーの異母兄で、結婚直後にクーデターを目論んで敗走、イングランドに亡命しています。

    ヘンリーを排除して自分が実権を握る野心があったとも言われていますが・・・・・・

    いやもう最大の政敵は血を分けた兄弟を地で行ってますわね。

    まっこと中世欧州は地獄ですわ。


              ◇          ◇          ◇


    ともあれ。

    一度敗れた如きで諦めては貴族など務まらん! と言わんばかりにマリ伯は陰謀を巡らせます。

    自分はイングランドに逃げ隠れていても情報網は健在のようで、当然メアリーとヘンリーの不仲なぞ筒抜けでした。

    勿論こんな美味しいネタを前に手をこまねいているようでは欧州貴族など以下略。

    早速水面下で蠢動を始めます。


              ◇          ◇          ◇


    調略の向かう先は異母妹のメアリー・・・・・・ではなく。

    (後ろ手に鈍器を隠しつつ)手を差し出したのは、ヘンリーの方でした。

    結婚時にクーデターまで起こしといて今更すり寄るなど恥の概念はないのかですって?

    そんな程度の体面を気にしてるようでは欧州貴族以下同文。

    最後に勝てばよかろうなのだァーッ! ですわ。

    1mmも見習う気にはなれませんけどね。


              ◇          ◇          ◇


    そもそも論として。

    マリ伯的には権力を握りたいのですから、間男(推定)のリッチオに懸想している(と妄想されてる)メアリーに与したところで何の益もありません。

    政治をそれなりにやるメアリーより、梅干し大の真っピンクに染まった脳味噌所有のヘンリーの方が御し易しと見ても何の不思議もありません。

    事実「貴公を真のスコットランド王にする代わりに我々の復権を保証せよ」等という空手形に嬉々としてサインしたと言います。

    全く、そんな脳弱だから暗殺されるんです。

    まぁ謀略仕掛けた方も大体暗殺されますけどね。

    まっこと中世欧州は地獄ですわ(2回目)