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No:539 タイトル:GEAR戦士撫子 新Part534 お名前:プロフェッサー圧縮 投稿日:2023/02/22 09:36:19 単表示 返信

さて。

どれ程鬱憤が溜まろうとも、どれ程不満があろうとも。

所詮は人間、悪態の語彙は尽きますし感情エネルギーだって限りがあります。

ヘンリーはメアリーへの罵倒を何ループかさせた後、流石に疲れたのか手にしたワインを一息に飲み干すと割り当てられた寝室へと引っ込みました。

そしてこれが。

生前のダーンリー卿ヘンリーの、最後の姿となりました。


          ◇          ◇          ◇


1567年2月10日未明。

ヘンリーが不貞寝した数時間後に、エディンバラ郊外で爆炎が吹き上がりました。

野次馬が見た光景は瓦礫と化したカーク・オ・フィールドと、庭にかすり傷一つ無い死体が2つ、転がっていた光景でした。

死体の生前の名はヘンリー・スチュアートとウィリアム・テイラー。

寝室へ向かったダーンリー卿とその従卒です。


          ◇          ◇          ◇


二人の死因は絞殺と診断されました。

首に痕が残っていたからです。

この大胆不敵な王族殺人事件にスコットランド民は震撼し。

そして口さがなく犯人探しが始まりました。

槍玉筆頭は不仲公然の秘密であるメアリーと。

リッチオ事件の後、急接近していたボスウェル伯ジェームズ・ヘップバーンです。


          ◇          ◇          ◇


ボスウェル伯としては4代目となるジェームズ・ヘップバーンは、エディンバラの高等行政官の家の生まれです。

イングランドとの小競り合いや盗賊討伐で名を上げたバリバリの軍人であり、マリ伯のクーデターを潰し敗走させたのも彼です。

そんな彼ですが、この暗殺の主犯と目されたにはいくつか理由があります。

一つは勿論噂されるメアリーとの不倫ですが・・・・・・

爆破現場から駆け去る11人の中に、ボスウェル派の貴族を見たという証言が出てきたからなのです。