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No:538 タイトル:GEAR戦士撫子 新Part533 お名前:プロフェッサー圧縮 投稿日:2023/02/15 09:51:19 単表示 返信

1567年2月1日。

国王夫妻は運命の舞台カーク・オ・フィールドに到着し、暫し穏やかな時を過ごしました。

内心はどうあれ、二人とも無用の波風は立てませんでした。

今更がなり立ててどうにかなる時期はとっくに過ぎ去っていたことを、二人は正確に知っていたのです。

それは結果として嵐の前の静けさとなりました。

火山の噴火前に森から音が消えるように。

偽りの平穏は、ヘンリーの病状が改善する2月9日まで続いたのです。


          ◇          ◇          ◇


その夜。

快気祝と称して、旧司祭舘で大規模な宴が催されました。

大勢が招かれ、豪勢な料理と酒、そして楽曲が供され。

メアリーもヘンリーも、この時ばかりは気分良く過ごしていたと言います。

少なくとも、表面上は。


          ◇          ◇          ◇


宴もたけなわの夜が更けかけた頃。

メアリーはふと、ある約束を思い出しました。

寵臣のバスチアン・パージュの披露宴に参加すると言ってあったのです。

それで中座すると告げたヘンリーは烈火のごとく怒りました。

寵臣と言いつつバスチアンの役職は宴会担当役人です。

政治儀礼的には重要な役職ではありましたが・・・・・・

流石に仮にも王族と比べるものではありません。

蔑ろにされたと思われてもむしろアタリマエと言わざるを得ませんわね。


          ◇          ◇          ◇


しかしこの時のメアリーは妙に頑なで。

ヘンリーがどれだけ要求しても喚き散らしても、披露宴出席を取り止めようとはしませんでした。

結局押し問答の揚げ句時間切れとなり、メアリーは披露宴出席を強行しカーク・オ・フィールドから出て行きました。

残されたヘンリーはあらん限りの語彙で妻を何時間も罵倒し続けたと言います。

・・・まあ、気持ちはわからなくもないですが。

それが今生の別れかと思うと・・・・・・微妙な気持ちになりますわね、ええ。